住宅ローンの店頭金利とは?適用金利との違いと過去10年間の店頭金利推移

住宅ローンを検討していると、
「店頭金利から最大○○%優遇!」 「適用金利は○○%」
という言葉をよく目にするかと思います。
しかし、どちらも同じような名前すぎて、「店頭金利とか適用金利とか、結局よくわからないんだけど…」と感じてしまいませんか?
そもそも住宅は一生で一度しか購入しませんから、専門用語が理解できないのは当然のことです。
ただ、そのわからない専門用語を、いちいち調べて理解するのもなんだか疲れてしまいますよね。
そこで当記事では、
- 店頭金利とは?適用金利となにが違うのか
- 各金融機関の店頭金利の実態
- 「当初優遇」と「通期優遇」の違い
など、初めて住宅ローンを組む人が悩みがちなポイントをわかりやすく解説していきます。
店頭金利を理解できれば、商品選びがもっと楽になりますよ。住宅ローンを検討中の方は、参考にしてみてくださいね。
この記事制作に関わる専門家
京都FP事務所
ファイナンシャル・プランナー
当サイトの執筆を担当している「京都FP事務所」と申します。専門用語ばかりにならないよう、「わかりやすく行動しやすい」執筆を心がけています。ぜひ参考にしてみてください。
ナビナビ住宅ローン編集部
住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。
店頭金利とは
店頭金利とは、金融機関が独自に設定している住宅ローンの「元々の金利」で、「基準金利」「店頭表示金利」とも呼ばれています。わかりやすくいえば、各種割引が適用される前の“定価”ですね。
住宅ローンでは、店頭金利という名の定価から各種割引が差し引かれ、実際に住宅ローンを借入れする際の「適用金利」が決まるのです。
住宅ローンの広告でよく見かける「店頭金利から最大○○%優遇」という言葉は、「元々の定価から各種割引で○○%金利を引き下げますよ」という意味なのです。
店頭金利は金融機関が自由に設定している、と聞くと、「じゃあ金融機関によって数値は大きく違うの?」と思うかもしれません。
しかしながら実際には、各金融機関の店頭金利に違いはほとんどありません。
なぜかこのようになるのかというと、店頭金利の決まり方はほとんどの金融機関で同じだからです。どのような仕組みで店頭金利が決まるのか、詳しくご説明していきますね。
店頭金利の決まり方
お伝えしたように、店頭金利は金融機関によって独自設定されている数値です。
しかし実際に各金融機関の住宅ローン店頭金利を見てみると、あまり大きな違いはありません。
たとえば、大手メガバンク3行の店頭金利(変動金利)は年2.475%(2019年11月時点)で、まったく同じなのです。
なぜこのような結果になるのかといえば、店頭金利を決める指標がほとんどの金融機関で共通だからです。
住宅ローンの店頭金利がどのような仕組みで決まっているのか、下記表にまとめました。
<金利タイプ別 住宅ローン店頭金利の決まり方>
金利タイプ | 店頭金利が決まる仕組み |
---|---|
長期固定金利 (契約後、金利が固定される) | 長期金利(10年もの国債の利回り)に影響を受けて変動する。長期金利は株価指標などと同じで毎日変動する「生きた金利」なので、短期金利よりも変動しやすい。 一般的に、期間が短い短期金利より長期金利のほうが数値は高めだが、景気の影響によっては両社の金利差がほとんどなくなったり、逆転したりすることもある。 |
変動金利 (契約後半年に1度金利見直し)(※) | 短期金利(短期プライムレート連動長期貸出金利)に影響を受けて変動する。短期金利は日銀が行う金融政策の影響を強く受けている。 |
※実際は半年ごとに毎回金利が変わるわけではありません。
関連記事:短期プライムレートとは?変動金利との関係や金利推移について解説
店頭金利は、金利タイプが
- 長期固定金利
- 変動金利
のどちらかによって決まり方が異なります。実は、各金利タイプはそれぞれ影響を受ける指標が違うのです。
ただ、どの金融機関であっても、「長期固定金利は長期金利から、変動金利は短期金利から影響を受けて変動する」という点がほぼ共通しているので、住宅ローンの店頭金利も同程度の水準になるということですね。
金利の決まり方は、金利タイプを検討するうえでも非常に重要なポイントですので、覚えておきましょう。
店頭金利と適用金利の違いについて
住宅ローンを検討していると、
という疑問が出てきますよね。
わかりやすくいえば、
- 店頭金利=定価
- 適用金利=実際に借りるときの金利で、割引後の価格
ということですね。
それぞれの違いをまとめると、下記のようになります。
<店頭金利と適用金利の違い>
店頭金利 別名:基準金利、店頭表示金利 | 住宅ローンの基準となる、もともとの金利。いわゆる「定価」 |
---|---|
適用金利 別名:表面金利・適用表面金利 | 住宅ローンの契約を結ぶ際に、実際に適用される金利。いわゆる「実質価格」 |
各金融機関では、利用者の条件を考慮したうえで、さまざまな割引&金利優遇プランが用意されています。
したがって、住宅ローンを利用するときは、店頭金利から各種割引を差し引いた金利が、実際の適用金利になるということです。
つまり、
- 店頭金利-優遇金利=適用金利(実際に借入する際の金利)
ということですね。
こう聞くと、
と思うかもしれませんね。
確かに、全期間固定金利の住宅ローンなら適用金利はずっと固定なので、店頭金利を気にする必要はないかもしれません。
しかしながら、変動金利や固定期間選択型の住宅ローンを借りる場合は、途中で店頭金利や金利優遇幅が変わる可能性があるのです。
したがって、店頭金利も非常に重要な数値になってくるわけですね。
たとえば、当初10年間のみ優遇幅の大きい住宅ローンを借りていて11年目に店頭金利が上昇した場合、下記のようになります。
-
(当初10年)店頭金利2.5%―当初10年間のみ▲1.8%の金利優遇=適用金利年0.7%
↓ - (11年目)店頭金利2.7%―金利優遇▲0.7%=適用金利年2.0%
上記は極端なケースですが、金利の優遇期間が終わり、さらに店頭金利が上がってしまえば、適用金利は大きく上昇する可能性があるのです。
店頭金利の仕組みを理解しておかなければ、金利変動にうまく対処することができません。
変動金利や固定期間選択型を借りる方は特に、各金利の意味をしっかり把握しておきましょうね。
関連記事:優遇金利と店頭金利について徹底解説!住宅ローンの基礎知識
店頭金利の推移
お伝えしたように、店頭金利は指標の変動と同時に推移していきます。
では、各金融機関の店頭金利は実際どれくらい変動があったのでしょうか。
過去の店頭金利推移を見ながら、今後の店頭金利について予測をしていきましょう。
過去の店頭金利の推移
ここでは、メガバンクの一つ、三井住友銀行の店頭金利を過去10年間分まとめました。
<三井住友銀行 過去10年間の店頭金利推移>
※金利は年率
金利適用月 | 変動金利 <短期プライムレート連動> | 長期固定金利 <20年超35年以内> |
---|---|---|
2019年6月 | 2.475% | 1.68% |
2019年1月 | 2.475% | 1.68% |
2018年6月 | 2.475% | 1.73% |
2018年1月 | 2.475% | 1.71% |
2017年6月 | 2.475% | 1.63% |
2017年1月 | 2.475% | 1.69% |
2016年6月 | 2.475% | 1.59% |
2016年1月 | 2.475% | 2.03% |
2015年6月 | 2.475% | 2.15% |
2015年1月 | 2.475% | 2.09% |
2014年6月 | 2.475% | 2.37% |
2014年1月 | 2.475% | 2.49% |
2013年6月 | 2.475% | 2.83% |
2013年1月 | 2.475% | 2.58% |
2012年6月 | 2.475% | 2.52% |
2012年1月 | 2.475% | 2.64% |
2011年6月 | 2.475% | 3.05% |
2011年1月 | 2.475% | 3.04% |
2010年6月 | 2.475% | 3.16% |
2010年1月 | 2.475% | 3.18% |
2009年6月 | 2.475% | 3.95% |
2009年1月 (1月13日~30日) | 2.475% | 3.20% |
関連記事:三井住友銀行の住宅ローンを徹底解説!価値あるサービスの提供を目指す都市銀行
過去10年間の店頭金利推移を見ると、驚くことに変動金利は10年間まったく変わっていませんね。対して固定金利は1%以上変動しており、緩やかに下降曲線をたどっています。
先述したように、固定金利の指標である長期金利は、短期金利より変動しやすいという特徴があります。
まさにそのとおりで、固定金利は結構な変動がありますね。
とお気づきの方もいらっしゃると思います。
確かに、この10年で実際に適用される変動金利はかなり低くなっていますよ。
しかしそれは店頭金利が変わったからではなく、各銀行の優遇幅が大きく下がったからなのです。
お伝えしたように住宅ローンの適用金利は、
- 店頭金利―金利の優遇幅=適用金利
という計算で求められます。10年前も2019年現在も、店頭金利は同じ2.475%です。
にもかかわらず適用金利が低くなっているということはすなわち、単純に金利の優遇幅が大きくなっているのです。
優遇幅というものは、各金融機関の販売戦略が大きく影響するものです。
2016年のマイナス金利政策導入により、多くの金融機関は融資を拡大しています。
その背景には、融資や投資などで資金を回しておかないと、日銀に預けている預金金利がマイナスになってしまうという事情があるからです。
その結果、住宅ローンの顧客獲得競争が激化し、優遇幅がどんどん大きくなった、ということですね。
今後の店頭金利の予測
過去の店頭金利から、今後の金利予測は可能なのでしょうか。結論から言えば、店頭金利がいつ、どれだけ上がるのかを完全に予測することはできません。
ただ、金利の決まり方の根本を理解しておけば、自分なりの予測ができるようになります。
予測ができれば、住宅ローンを組むときも金利タイプが決めやすくなりますし、将来の返済計画にも役立ちます。
予測をする前に、金利の決まり方を振り返ってみましょう。
- 変動金利→短期金利→短期プライムレートに影響を受ける
- 固定金利→長期金利→10年もの国債の利回りに影響を受ける
ここまではお伝えしたとおりです。では、そもそも短期プライムレートや10年もの国債の利回りは、どのように決まるのでしょうか?
端的にまとめると、
-
変動金利→短期プライムレートに影響を受ける→日銀の金融政策に影響を受ける
→つまり、政府の判断で決まる -
長期固定金利→10年もの国債の利回りに影響を受ける
→将来の予想に基づく期待インフレ率+潜在成長率+リスクプレミアムなどが影響
→つまり、市場の動向で決まる
ということになります。
それぞれを踏まえて、変動金利と固定金利の予測をご説明していきますね。
変動金利の予測
結論からいえば、変動金利は2019年11月以降もしばらくは横ばいだと想定されます。
変動金利は、日銀の金融政策、つまり政府の判断で決まります。
したがって、変動金利の予測を立てるときは、日銀の金融政策の動向を注視するのが基本になりますよ。
日銀は2%の物価上昇率を目標に掲げており、そのためにマイナス金利政策[「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」(※1)]を導入しました。
つまり今後変動金利が上昇するとすれば、日銀が物価上昇率の見通しを2%にしたときでしょう。
ただ、2019年11月現在も物価上昇率到達の見込みはありません。2019年7月に日銀から発表された2021年度の見通しでも、物価上昇率の見込みは1.6%(※2)でした。
日銀としては物価上昇率の目標到達が最優先でしょうし、今の状況では、大きく金融政策を引き締める動きはないはずです。
つまり、変動金利はまだしばらく変わらず横ばいになるだろう、という予測を立てることができますよ。
関連記事:住宅ローンの変動金利は怖くない!リスクを抑えてメリットを活かす賢い使い方
参考
※1マイナス金利について:「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」(日本銀行):
※2物価上昇率の見通し:「経済・物価情勢の展望」(日本銀行)
長期固定金利の予測
こちらも結論からお伝えすると、2019年11月以降もしばらくは固定金利(長期金利)も横ばい傾向が続くと予想されます。
長期固定金利は、市場の動向で決まるため、景気について敏感になる必要があります。
2019年11月現在、日本の市場を大きく占めているのは、800兆円以上の10年残高を占める国債(※1)です。
今は景気が停滞傾向なので、国が発行する安定資産である国債を購入する投資家が多く、購入比率が高まっているのです。
ただ、今後景気が良くなれば、国債以外の市場に資金は流れるでしょう。
そうなれば国債の値段は下がり、国債利回りは上昇=長期金利も上昇します。
これが、長期固定金利が上がる流れです。
しかし、前述のマイナス金利政策の中で、日銀は政府発行の国債を大量に買い入れしています。
これには、長期金利(固定金利)を押し下げるという目的があります(※2)。
物価上昇を最優先に考えている日銀が市場動向をコントロールしているということはすなわち、やはり物価の上昇が大きなカギになるということですね。
2019年10月の消費税増税で消費が冷え込む恐れがあるため、まだまだ景気が上向きになる気配はありません。
日銀が公表した物価上昇の見込みもまだ2%には到達していませんし、しばらくは固定金利(長期金利)も横ばい傾向が続くと予想されます。
金利予測をするなら根本的な仕組みの理解が重要
このように、金利が変わる根本を知っておけば、政府や市場の動きを読み、未来の金利を予測しやすくなります。
予測があたるかどうかは誰にもわかりません。でも、動きや仕組みをっておけば、金利タイプを考えるときにも役立つでしょう。
【参考】
※1公債残高の累積:(財務省)
※2マイナス金利について:「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」(日本銀行)
当初優遇、通期優遇の違いについて
住宅ローンの適用金利は、店頭金利から大幅に金利を割引される「金利優遇幅」が低金利を作るおもな要因になっています。
金利優遇幅には、「当初優遇」と「通期優遇」という2種類のプランがあります。
それぞれどのような違いがあって、どちらを選ぶべきなのでしょうか。具体的な優遇内容や違いを一覧表にまとめました。
<当初優遇、通期優遇の違い>
当初優遇 (当初引下げ) 住宅 | ローン借入当初(あらかじめ約束された期間まで)の金利優遇が大きい |
---|---|
通期優遇 (通期引き下げ、全期間引下げ) | 住宅ローンの借入期間中、全期間において一定の金利優遇が受けられる |
「当初優遇」は、当初○○年までなど、借入当初の金利を引き下げて負担を大きく減らすプランです。
「子どもの教育費がかかる初めの数年だけ金利負担を抑えたい」という方や、「繰り上げ返済を活用して短い期間で返済したい」という方に適していますね。
一方、「通期優遇」は、全期間一定の金利優遇が受けられるので、ローン返済中に万一店頭金利が上昇しても、一定の金利引下げ効果が期待できます。
したがって、「長期で住宅ローンを返済していきたい」という方や、「変動金利の上昇不安を少しでも緩和したい」という方に適していますよ。
それぞれ向き不向きがあるので、割引を始めにしっかり受けたいなら当初優遇、長い期間で安定して割引を受けたいなら通期優遇がおすすめですね。
まとめ
住宅ローンの店頭金利についてご説明してきました。
あらためて記事の重要ポイントをまとめると、
- 住宅ローンの金利は、「店頭金利( 定価)-優遇幅(割引)=適用金利(実質価格)」という仕組みで成り立つ
- 住宅ローンの変動金利が低下しているのは、各金融機関の優遇幅が拡大しているから
- 固定金利は金利変動が起きやすく下降傾向にあるが、変動金利の店頭金利はここ10年間変わっていない
- 店頭金利に影響を与えるのは政府や市場動向。2019年9月現在も景気や物価上昇は見込めず、まだしばらく固定金利・変動金利ともに横ばいだと予想される
の4つですね。
住宅ローンの金利は、店頭金利や金利の優遇幅で大きく変わります。