• 2020.08.13

住宅を相続する際に気を付けるべきポイントは?

執筆者: 青野 泰弘 (行政書士、ファイナンシャルプランナー)
住宅を相続する際に気を付けるポイント

この記事を執筆・監修している専門家

執筆者

青野 泰弘

青野行政書士事務所 行政書士、ファイナンシャルプランナー

保有資格・検定

行政書士、ファイナンシャルプランナー(CFP®)、日本証券アナリスト協会検定アナリスト(CMA)、プライマリープライベートバンカー

1964年静岡県生まれ。同志社大学法学部卒業後、国際証券に入社。その後トヨタファイナンシャルサービス証券、コスモ証券などで債券の引き受けやデリバティブ商品の組成などに従事した。2012年にFPおよび行政書士として独立。相続、遺言や海外投資などの分野に強みを持つ。

編集者

ナビナビ住宅ローン編集部

住宅ローンを組む時に抱える「どうやって住宅ローンを選べば良いかが分からない」「金利の違いがよく分からない」「一番お得に借りられるローンはどれなの?」といった疑問・不安を解決できるように解説していきます。

はじめに

みなさんは住宅を相続すること考えたことがありますか? これは他人事ではありません。

「平成30年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)によれば、全世帯に対する持家比率は61.2%となっています。

これは大雑把に言えば世帯主が亡くなった場合に、3人に2人は住宅を持っているということです。したがって、住宅の相続について知っておくことは、大変重要です。

住宅を相続する際に気をつけるポイントは?

住宅が相続財産に入っているとしたら、どのようなことから考えたらよいのでしょうか?

住宅は分け方が難しい財産です。預貯金などであれば、3分の1ずつなど、簡単に分けることができます。また有価証券でも、その評価額の算出方法は相続税法で決められています。

しかし住宅を含めた不動産は、共有名義にはできても、自分の持分だけ売却することができません。

また時価と相続税評価額が違っていたり、登記の変更時の手数料や固定資産税など費用負担を伴ったりなど、他の相続財産とは違った扱いが必要になります。

そして相続する人により、相続税評価額が軽減されることもあるので、遺言書がない場合には誰が相続するかを慎重に検討する必要があります。

住宅を相続する手続はどのようなものか?

相続財産の中に住宅があった場合に、行うべき手続は以下になります。

  1. 住宅を誰が相続するかを話し合う

  2. 遺産分割協議書を作成する

  3. 税務署に申告する

  4. 不動産の登記変更(相続登記)を行う

  5. 不動産を売却する

税務署への申告や不動産の売却は必要があるときのみ行う事項です。

また遺産分割が合意に至らなければ、遺産分割協議書は作成できませんが、その際は、法定相続分で共有名義として登記することができます。詳しくは以下で解説していきます。

1 住宅を誰が相続するかを話し合う

ここでは相続人別のケースに分けて、メリットや使える制度、手続などを説明していきます。

特に相続財産が住宅だけの場合や二次相続(父⇒母⇒子)までを考えないといけない場合など、それぞれの場合で誰に相続させるのが良いのかが変わってきますので、慎重に検討しましょう。

配偶者が相続する場合

一番多いケースとして、住宅の所有者がなくなり、その亡くなった人(被相続人)の配偶者がそのまま住むというケースです。

この場合のメリットとしては、配偶者に対するさまざまな相続税の軽減が受けられるということです。

相続税の軽減制度

配偶者の税額軽減

配偶者が相続した場合、取得した財産の合計額が、法定相続分または1億6000万円までは相続税がかからない

小規模宅地の特例

配偶者等の一定の相続人が相続すれば、330㎡までは評価額の80%を減額できる

まず一つ目として、配偶者の税額軽減が受けられます。配偶者は相続により取得した財産の合計額が、法定相続分または1億6000万円までは相続税がかからないというものです。

ただし配偶者の税額軽減を受けるためには、相続税額がゼロであっても、税務署に申告をしなければなりません。

次に小規模宅地の特例というものがあります。これは被相続人が居住していた住宅の宅地について、配偶者等の一定の相続人が相続すれば、330㎡までは評価額の80%を減額できるという制度です。大都市など土地の高い地域では、80%の評価減は、非常に大きなものになります。

ただし小規模宅地の特例を受けるためには、配偶者の税額軽減と同様に、相続税の申告書を提出する必要があります。

配偶者以外の同居親族が相続する場合

次のケースとしては、被相続人と同居していた子などの親族が住宅を相続するケースです。

メリットとしては、同居親族であれば、小規模宅地の特例を受けることができるということです。ただし同居親族の場合は、同一生計といって、被相続人に扶養されていることが要件になります。

また同一生計であっても、相続人にならない人(被相続人に子がいるときの兄弟姉妹など)に住宅を相続させるためには、遺贈といって遺言書を作成して、その人に住宅を相続させる旨を遺さないといけませんので、注意してください。

また20204月からは配偶者居住権が認められるようになりました。

この制度は、被相続人が所有していた住宅に同居していた配偶者は、相続によりその住宅の所有者が変わっても、居住する権利が与えられるというものです。

例えば、被相続人の子が同居していて、この住宅を相続した場合、被相続人の配偶者は、この住宅に継続して住む権利を与えるというものです。この制度は、相続財産がほぼ住宅のみの場合などで効果があります。 

例えば、相続財産が自宅だけの場合で、相続人が配偶者と息子と想定します。自宅を配偶者が相続すると、息子は何ももらえないことになります。息子が遺留分を請求した場合には、自宅を売却しなければ、資金を捻出できないこともあります。

一方、息子に自宅を相続させると、仲が悪くなった場合には、配偶者は家から追い出される危険がでてきます。この様なときに配偶者居住権を使えば、自宅を息子に相続させても、配偶者は死ぬまでは自宅に住むことができます。また息子に自宅を相続させているので、遺留分は請求されなくなります。 

配偶者居住権は、建物や土地の相続税評価額を基本に、配偶者の平均余命年数、その年数の複利原価率(将来の価値を現在の価値に割り引くときに使用する係数で国税庁のホームページで確認できます)などを用いて算出されます。

配偶者居住権を設定することで、建物や土地の相続税評価額を下げることができますので、節税にも効果があるといえます。

なお配偶者居住権は、建物にのみ登記ができますが、登記しなければ効力がありませんので、忘れないようにしましょう。

同居人がいない場合

被相続人が亡くなった時に同居していた人がいない場合でも、一定の条件を満たせば同居していなかった相続人でも、小規模宅地の特例を受けることができます。自分の家を持っていないことが条件の一つなので、「家なき子の特例」と呼ばれています。

家なき子の特例の条件

  1. 被相続人に同居配偶者もしくは親族がいないこと
  2. 宅地を相続人は、相続の3年前までに「自己または自己の配偶者」、「3親等以内の親族」、「特別の関係がある法人」の持ち家に住んだことがないこと
  3. 相続した宅地を相続税の申告期限まで保有すること
  4. 相続開始時に居住している家屋を過去に所有していたことがないこと

家なき子の特例により同居していない相続人でも、小規模宅地の特例を使うことができ、土地の価格の高い都市部の宅地を相続したとしても、相続税の評価額を下げることができます。

また配偶者居住権とも併用できますので、住居には配偶者にそのまま住んでもらうことも可能です。

2 遺産分割協議書を作成する

住宅を誰が相続すると決まった後にすることは、遺産分割協議書を作成することです。遺産分割協議書とは、被相続人の遺産を相続人の間でどのように分けたかを書面にしたものです。遺産分割協議書は、登記の申請時に添付が必要な書類であるだけでなく、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例を受ける際にも必要な書類です。

遺産分割協議書に記載しなければならない事項については、以下のものがあります。

  • 被相続人の表示(被相続人の氏名、本籍地、死亡時の住所、死亡日時)

  • 相続人全員の氏名、住所(署名、実印、印鑑証明が必要)

  • 不動産の表示(登記簿謄本とおりの所在地、地番、地目、地積、家屋番号など)

これらの事項が正しく記載されていないと、登記の申請や配偶者の税額軽減、小規模住宅の特例などの申請を受け付けてもらえませんので、気をつけてください。

自分で作成するのが不安な場合には、専門家に相談するようにしましょう。

3 税務署へ申告する

遺産分割協議が整ったら、税務署へ申告することになります。

また相続税額がゼロであっても、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例を使う際には、税務署への申告が必要となります。

遺産分割が整わずに、申告期限を過ぎてしまうと配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例が使えなくなりますので、忘れずに手続を行いましょう。

また相続税の申告期日(被相続人の亡くなった日から10ヵ月以内)までに、申告ができないといったときは、どうしたらよいでしょうか?

この場合には、まずは期限内に共有持分で申告を行い、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を添付します。

後日分割協議がまとまれば、その日から4ヶ月以内に税務署に更正の請求を行うことで、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例を受けることができます。

分割協議が3年経っても整わないときは、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」という書類を、3年経過した日の翌日から2ヶ月以内に税務署に提出して、承認を受けなければなりません。

ただし本当にやむを得ぬ事由(相続に関する裁判が継続中など)でないと税務署の承認は得られません。承認を得られた後、遺産分割協議がまとまれば、その日から4ヶ月以内に税務署に更正の請求を行うことで、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例を受けることができます。

「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出も、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」の提出も、それぞれ期限があります。期日を過ぎた場合には、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例を受けることができなくなりますので、十分注意してください。

4 不動産の登記変更(相続登記)を行う

遺産分割協議書が出来上がり、相続税の申告が終わったら、次に登記の変更を行います。

登記を行うためには、住宅の住所地を管轄する法務局の窓口へ書類を提出して行います。一般の登記申請では、旧所有者である登記義務者と新所有者である登記権利者の両方が協力して行いますが、相続登記の場合は、登記義務者は亡くなっているので、登記は権利義務者のみで行います。

また登記を行う際の登録免許税を支払う必要はありますが、不動産取得税はかかりません。

5 不動産を売却する

誰も住む人がいない場合は、処分する方法を考えなくてはいけません。

いずれ誰かが住むかもという曖昧な判断で放置することは、将来に問題を先送りしているだけで、良いこととは何もありません。住宅は人が住んでいないと換気などができないため、傷みが進みやすくなります。

したがって、相続後に誰も住まない住宅がある場合には、取り壊したり、売却したりすること考えた方がいいでしょう。今、全国で空き家が問題となっていますが、放置したままにしておくと固定資産税の軽減もなくなる方向です。

(参照)国土交通省:「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)

売却については、不動産会社が無料で査定してくれますし、自治体の空き家バンクなどに登録するのも一つの方法です。ただし立地の良くないところでは、売却まで時間がかかることを認識しておきましょう。

まとめ

住宅を相続する際のポイントについて、理解いただけましたでしょうか?

住宅は誰が相続するかで、相続税の評価額等が大きく違ってきますので、慎重に検討する必要があります。また特例を使う際は、税務署への申告が必要となりますので、忘れずに行いましょう。

税務署への申告や法務局への登記の申請は、必要書類を集めるなど面倒な手続になる場合もありますので、必要であれば専門家に相談するようにしましょう。

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